妊婦健診が楽しみじゃない。怖いまま通っている方へ

名前が呼ばれるのを待つ、病院の静かな廊下と待合の椅子

診察室の前の廊下で、名前が呼ばれるのを待っています。

台に上がって、冷たいジェルがお腹に触れる。そこから、エコーの画面が映るまでの数秒。その数秒が、毎回こわい。

画面に動きが見えて、先生が「順調ですね」と言う。そこでようやく息を吐く。吐いてから、自分がずっと息を止めていたことに気づく。

待合室には、これから健診を受ける方が座っています。楽しそうに見える人もいる。エコーの写真を見せ合っている声が聞こえることもある。その中で、自分だけが祈るような気持ちでここに座っている気がする。

「妊婦健診 楽しみじゃない」「妊婦健診 怖い」。そんな言葉で検索して、このページにたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。

同じように感じている方は、少なくありません。

目次

その気持ちを、言葉にすると

怖いのは結果そのものではなく、「もう決まっていることを、確かめに行く」ことかもしれません。

妊婦健診は、多くの場合「赤ちゃんに会える日」として語られます。エコーの写真をもらって、家族に見せて、名前を考える。そういう時間として紹介されることが多い。

けれど、同じ健診が、まったく違う時間になることがあります。

会いに行くのではなく、確かめに行く。 無事でいてくれているかどうかを、確認しに行く日。そう感じている方にとって、健診は楽しみなイベントではなく、結果発表に近いものになります。

ここで大事なのは、怖いのが「エコーそのもの」でも「先生」でもないということです。

診察台に上がった時点で、結果はもう決まっています。 今日の画面に映るものは、この数週間のあいだに起きたことであって、今から何かをして変えられるものではない。健診は確かめる場であって、変える場ではありません。

つまり、あなたが怖いのは確認することではなく、どうにもできないことを確認しに行くことなのだと思います。

そして、もうひとつ、しんどいことがあります。

この気持ちは、口に出しにくい。

「健診が楽しみじゃない」と言うと、空気が変わる気がする。「せっかく授かったのに」と思われそうな気がする。だから言わない。言わないまま、待合室で周りを見ている。

楽しみじゃないなんて、母親としてどうなんだろう。

そう思っていらっしゃるとしたら、この記事でお伝えしたいのは、その逆のことです。

出かける前のテーブルに置かれたバッグとたたまれたカーディガン

同じように感じている人は、少なくありません

この気持ちは、検索の記録にはっきり残っています。

Googleの検索窓に「妊婦健診 楽しみ」と入力すると、候補として「妊婦健診 楽しみじゃない」が出てきます(出典:Googleサジェスト/2026年9月確認)。

「楽しみ」と打った人が、その続きに「じゃない」を探している。同じ言葉を打ち込んだ方が、それだけいるということです。

さらに、この言葉で実際に検索すると、一番上に出てくるのは医療機関のページではなく、匿名の質問サイトへの投稿でした(2026年9月確認)。健診が怖い、いつになったら楽しみになるのか、という問いかけです。

調べても答えが見つからず、匿名で誰かに聞ける場所を探している方がいる。それも、検索結果の一番上に来るほどいる。

言い換えると、この気持ちは大勢が抱えていて、けれど名前を出しては言えていないということでもあります。

あなたが特別に心配性なわけではないのだと思います。ただ、口に出す方が少ないだけです。

もちろん、人数が多いことは、あなたのつらさが軽いという意味ではありません。不妊治療を経て授かった方、前の妊娠を最後まで続けられなかった経験のある方にとっては、あの数秒の重さがまた違ってきます。つらさに順番はありませんが、抱えているものが違えば、感じ方も変わります。

なぜ、そう感じるのか

理由は3つ考えられます。いずれも、あなたの性格の問題ではありません。

「楽しみ」が前提になっている場所では、不安の置き場所がない

母子手帳、健診の案内、産院に置かれた雑誌。妊娠にまつわる情報の多くは、「楽しみ」「幸せ」という前提で作られています。

前提があること自体は、悪いことではありません。ただ、その前提から外れた気持ちは、置き場所がなくなります。

不安がないわけではない。けれど、それを出す場所が用意されていない。だから自分の中にしまう。しまったものは消えないので、健診の日が近づくたびに、また出てきます。

不安が強いのではなく、不安の行き先がない。 これは環境の側の話であって、あなたの心の弱さの話ではありません。

自分にできることが、何もない時間だから

人は、手を打てるあいだは不安に耐えられます。調べる、動く、誰かに聞く。行動が残っているうちは、気持ちの持っていき場所があります。

けれど健診の結果については、できることがありません。前日に何をしても、当日の画面に映るものは変わらない。

心理の領域では、自分でコントロールできない出来事ほど、負担が大きくなりやすいと考えられています。同じ出来事でも、自分で何かを変えられる場合と、結果を待つだけの場合とでは、重さが違います。

健診が怖いのは、あなたが弱いからではなく、自分では動かせない出来事だからです。

一度言われた言葉は、次の健診まで消えないから

健診で、気になることを一言だけ言われることがあります。「少し小さめですね」「次回もう一度見ましょう」。

医師にとっては経過を見るための一言でも、受け取った側は、その言葉を家に持ち帰ります。そして次の健診まで、何度も思い出す。

診察室の中では数秒だったものが、あなたの中では何週間も続いている。 これは聞き方が悪かったのでもなければ、気にしすぎでもありません。自分で確かめる手段がないあいだ、言葉だけが手元に残るからです。

こうして、健診は「会える日」から「何か言われるかもしれない日」に変わっていきます。

その変わってしまった感覚を、誰かに説明しておきたいときは、妊娠中の気持ちを聞くカウンセリングのような場所もあります。

健診と健診のあいだの、その待つ時間については、妊婦健診が4週に1回で不安。次の健診までをどう過ごすか に詳しく書きました。

病院の窓辺のベンチに差し込むやわらかな昼の光

抱えたまま過ごすための考え方

不安をなくす方法ではありません。怖いまま健診の日を迎えるための考え方です。

「楽しみ」に合わせようとしなくていい

周りに合わせて楽しみなふりをすると、そのぶん自分の気持ちが行き場を失います。ふりをするのも疲れますし、疲れたことにも気づきにくくなります。

健診は、楽しみにしていなくても受けられます。怖いまま行っていい。 気が重いまま予約票を持って出かけて構いません。

「楽しみになれない自分」を直そうとしなくてよいのだと思います。直すべき欠点ではなく、今の状況に対する自然な反応だからです。

夕暮れの住宅街。帰り道に長い影がのびる通り

健診の日を、一日まるごと決めておく

健診の日がつらいのは、診察の数分だけではありません。行きの電車、待合室の時間、帰り道。その全部が緊張の中にあります。

あらかじめ決めておけることがあります。

  • 可能なら、誰かと一緒に行く。待合室に一人でいる時間が短くなります
  • 聞きたいことを、前の晩に紙に書いておく。診察室では頭が真っ白になりやすいものです
  • 健診のあとに、小さな予定を入れておく。カフェに寄る、まっすぐ帰って何もしない、どちらでも構いません

どれも不安をなくすものではありません。ただ、その日を「乗り切る日」として扱えるようになります。

安易に「大丈夫だよ」と言ってこない相手を一人決めておく

「健診が怖い」と話したときに、「大丈夫だよ」「考えすぎ」と返されると、もう話せなくなります。

相手に悪気はありません。心配しているからこそ、安心させようとして出てくる言葉です。ただ、その一言で話が終わってしまう。

必要なのは、答えをくれる人ではなく、そのまま聞いて終われる相手です。

家族でも、友人でも構いません。身近にいなければ、助産師さんや地域の相談窓口、カウンセリングのような場所もあります。誰にどこまで話すかは、あなたが選んでいいことです。

調べることがやめられない状態については、妊娠中の検索がやめられないのは、意志が弱いからではありません に書いています。

身近にそういう相手が見つからないときは、妊娠中の気持ちを聞くカウンセリングのような場所を、その一人にしていただいても構いません。

※ 不安で眠れない日が続く、食事がとれない、日常生活が回らないと感じるときは、我慢せず主治医や助産師にお伝えください。 妊娠中の心の状態は、相談してよいこととして扱われています。伝えることで、健診の受け方を調整してもらえる場合もあります。

一人で抱えなくていい

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

健診が楽しみじゃないことを、誰にも言えないまま、次の予約日を待っているのだと思います。言えないのは、あなたが閉じているからではなく、言える場所がなかっただけです。

こんなことを相談してもいいのかな。 そう思うようなことでも構いません。うまく言葉にできないまま話し始めても大丈夫です。

話す相手が見つからないときは、妊娠中の気持ちを聞くカウンセリングのような場所もあります。オンラインで、60分。診察室では聞きにくいことを、そのまま話していただけます。

怖いまま通っている時間を、一人で抱えなくていいのだと思います。

妊娠中の気持ちを相談する →


執筆:日本メンタル心理士アカデミー(メンシア)
監修:植田那月(臨床心理士・公認心理師)

看護師資格を持つカウンセラーと、臨床心理士・公認心理師が在籍するカウンセラー養成機関です。産前産後の方が相談できる場として、カウンセリングプラットフォーム「Perch」を運営しています。

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