妊娠中の検索がやめられないのは、意志が弱いからではありません

夜の部屋で光るスマートフォン

「今日はもう調べない」と決めたのに、気づけばまた検索している。

夜、部屋の電気を消したあと。スマートフォンの明かりだけがついて、検索窓に同じような言葉を打ち込んでいる。出てくるのは、前にも読んだページです。それでも下までスクロールして、また別のページを開く。

読み終えても、安心はしません。むしろ、読む前より不安になっていることの方が多い。 それなのに、指が止まらない。

「妊娠中 検索魔 やめたい」「妊娠中 検索しすぎ」。そんな言葉で調べて、このページにたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。

やめられないのは、あなたの意志が弱いからではありません。

目次

その気持ちを、言葉にすると

つらいのは検索そのものより、「やめられない自分」を責めていることかもしれません。

検索をしているあいだ、頭の中では2つのことが同時に起きているのではないかと思います。

ひとつは、赤ちゃんのことが心配だという気持ち。もうひとつは、「またやってる」「よくないと分かっているのに」という、自分への責めです。

不安で調べる。調べて怖くなる。怖くなった自分を責める。責めた分だけ、また落ち着かなくなる。

つらさが、二重になっています。

そして、この話は人にしにくい。「そんなに調べない方がいいよ」「気にしすぎだよ」と返ってくることが、話す前から分かっているからです。悪気のない言葉だと分かっていても、返事が見えていると、話す気持ちは削がれます。言われる前に、自分で「気にしすぎかもしれない」と飲み込んでいる方もいるかもしれません。

それに、調べる先がインターネットしかない、という事情もあります。次の健診までは日があって、電話で聞くほどのことでもない気がして、身近な人には心配をかけたくない。手元にあるのが検索窓だけなら、そこを開くのは自然なことです。

「検索魔」という言葉があります。自分のことをそう呼んでいる方は少なくありませんが、あの言い方には、自分を軽く笑って済ませようとする響きがあります。笑って済ませないと、置き場所がないからなのかもしれません。

心配すること自体は、悪いことではありません。この記事でお伝えしたいのは、やめる方法ではなく、なぜやめられないのかの方です。

夜明け前のカーテンの隙間から差す光

同じように感じている人は、少なくありません

この悩みには、すでに呼び名がついています。

Googleで「妊娠中 検索」と入力したときに表示される関連キーワードを、2026年8月に確認しました。いちばん上に出てくるのは「妊娠中 検索魔 やめたい」です。続いて「妊娠中 検索魔」「妊娠中 検索しすぎ」「妊娠中 検索しない」と並びます。(出典:Googleサジェスト/2026年8月確認)

「やめたい」という言葉が、いちばん上に来ています。 これは、同じことで困っている方がそれだけ多く、しかもやめたいと思いながら、それでも続いているということでもあります。

「検索魔」という呼び名が定着していること自体も、この状態がありふれていることを示しています。あなたが特別なわけではありません。

もちろん、人数が多いことは、あなたのつらさが軽いという意味ではありません。同じ言葉で検索していても、抱えているものは一人ひとり違います。前の妊娠を最後まで続けられなかった経験のある方や、不妊治療を経て授かった方にとっては、調べずにいることの難しさがまた違ってきます。

なぜ、そう感じるのか

やめられないのは、検索が「短い時間だけ、ちゃんと効いてしまう」からです。

短い安心と、長い不安

不安なときにとった行動は、そのあとの気持ちの変化とセットで見ると、仕組みが見えやすくなります。

検索したあと、一瞬だけ安心する瞬間があるはずです。「同じ人がいた」「大丈夫だったと書いてある」。その瞬間、不安が少し下がります。

問題は、その安心が長く続かないことです。しばらくするとまた気になって、確かめたくなる。そしてまた調べる。

このとき起きているのは、こういうことです。

短い時間で起きること長い時間で起きること
調べると、少し落ち着く「確かめないと落ち着けない」状態の方が強くなる

つまり、検索はちゃんと効いています。 効いているから続くのであって、効かないことを人は繰り返しません。

これは意志の強さの話ではありません。短い時間で効くものは、やめるのが難しい。 それだけのことです。

もう、調べ尽くしている

もうひとつ、大事なことがあります。

調べれば分かる情報を、あなたはもう調べ尽くしています。

まわりの人は「調べすぎだよ」「先生に聞けばいいよ」と言います。その助言は、知らないから困っている人に向けたものです。でも実際には、知った上で困っている。読めるものはもう読んでいて、そのうえで、まだ確かめられないものが残っている。

だから情報を足しても届きません。足りていないのは情報ではなく、確かめられないという状態そのものだからです。

そしてもうひとつ。調べるという行動は、何もできない時間に、唯一できることでもあります。 待つしかない時間のなかで、自分にできる数少ない手が検索だった。そう考えると、やめられないのはむしろ自然なことに見えてきます。

検索の代わりに使える時間として、妊娠中の気持ちを聞くカウンセリングのような場所もあります。

次の健診までの時間そのものについては、妊婦健診が4週に1回で不安。次の健診までをどう過ごすか にも書きました。

朝の光と温かい飲み物

抱えたまま過ごすための考え方

検索をやめる方法は書きません。やめずに済むように、手を増やす話をします。合う・合わないは人によって違うので、気になったものだけで大丈夫です。

やめるのではなく、増やす

心理学では、ストレスへの対処のしかたをコーピングと呼びます。ここで大事なのは、良い方法をひとつ見つけることではなく、手の数を増やしておくことです。

いま検索が止まらないのは、それしか手がないからとも言えます。手がひとつしかなければ、そこに全部が集中します。

だから「検索をやめる」ではなく、「検索も残したまま、ほかの手を1つか2つ足す」と考えてみます。減らす話ではないので、失敗しようがありません。

  • 誰かに話す
  • 書き出す
  • 体を動かす
  • お風呂に長く入る
  • とりあえず寝る

効くものは人によって違います。すすめられた方法が効かなかったとしても、あなたに問題があるわけではありません。 合うものを探している途中なだけです。

話す相手が見つからないときは、妊娠中の気持ちを聞くカウンセリングのような場所もあります。

いちばん元気がない日でもできることを、先に決めておく

手を増やすといっても、しんどいときに新しいことは始められません。その日いちばん元気がないときでもできることを、先にひとつ決めておくと使いやすくなります。

温かい飲み物を持つ。手を軽くこする。窓を開ける。それくらいで十分です。効果が大きいものより、確実にできるものを選んでおく。

そのうえで、少し余裕がある日のために、もう1段階だけ用意しておく。段階を選べる状態が、いちばん扱いやすい形です。

夜は、手が減る時間

検索がいちばん止まらなくなるのは、たいてい夜ではないでしょうか。

これには理由があります。夜は、そもそも使える手が少ない時間です。友達には連絡しにくい、病院は開いていない、家族は寝ている。日中なら選べたはずのものが、夜には消えていく。残っているのが検索だけになります。

夜に検索が増えるのは、あなたの気持ちが夜に弱くなるからではなく、選べるものが減っているからという側面もあります。

だとすれば、夜のための手を、明るいうちに用意しておくという考え方ができます。寝る前に見るものを決めておく。スマートフォンを寝室から離すのが難しければ、充電する場所だけ変えてみる。 できる範囲でかまいませんし、できない日があっても大丈夫です。

つらさが続いているときは

眠れない日が続いている。食べられない。涙が止まらない。生活が回らなくなっている。そんな状態が続いているときは、我慢しないでいただきたいと思います。

かかりつけの産科や助産師さんは、体のことだけを聞く相手ではありません。お住まいの自治体にも、妊娠中の相談窓口があります。「こんなことで相談していいのかな」と思う内容で大丈夫です。

寝室から離した場所で充電するスマートフォン

一人で抱えなくていい

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

検索が止まらない時間の裏側にあるのは、確かめたいのに、確かめられないという気持ちなのだと思います。そして多くの場合、その気持ちを話せる相手が見つかりません。

親に言えば心配させてしまう。パートナーに言っても、同じ温度では受け取ってもらえない。友達には、おめでたい話として届いてしまう。

誰に相談すればいいか分からない。

検索窓は、24時間そこにあります。誰にも心配をかけず、呆れられることもない。だから開いてしまうのだと思います。

話す相手は、身近な人でなくてもかまいません。むしろ、生活が地続きでない相手だからこそ、言えることがあります。

Perchは、新しい命を迎える時期の、ゆれる気持ちを話せる場所です。看護師資格を持つカウンセラーも在籍しています。オンラインなので、ご自宅から話せます。1回60分、初回は3,000円です。

うまく言葉にできなくても大丈夫です。 まとまらないまま、話したいところまで話していただいて大丈夫です。

妊娠中の気持ちを相談する →


執筆:日本メンタル心理士アカデミー(メンシア)
監修:植田那月(臨床心理士・公認心理師)

看護師資格を持つカウンセラーと、臨床心理士・公認心理師が在籍するカウンセラー養成機関です。産前産後の方が相談できる場として、カウンセリングプラットフォーム「Perch」を運営しています。

  • URLをコピーしました!
目次