妊活で旦那が非協力的なつらさは、分担の問題ではありません

朝の玄関、そろえて置かれた一足の靴

朝、いつもどおりに出ていく背中を見送る。今日が何の日か、たぶん覚えていない。

「今日、病院だから」と言うと、「わかった、気をつけてね」と返ってくる。優しい言い方です。それなのに、何かが足りない。足りないと感じた自分に、また引っかかる。

夜、話そうとして、やめる。話せばたぶん、ケンカになるか、気まずくなるか、どちらかだからです。

「妊活 旦那 非協力」「妊活 旦那との温度差」。そんな言葉で検索して、このページにたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。

手伝ってくれたらいいのに、と思う。でも、手伝ってもらっても、たぶん足りない。その「たぶん足りない」が、どこから来るのか。

同じように感じている方は、少なくありません。

目次

その気持ちを、言葉にすると

つらいのは、してもらえないことではなく、これが自分ひとりの事になっていることかもしれません。

「協力してくれない」と言うとき、思い浮かんでいるのは、具体的な作業でしょうか。

検査に行ってほしい。通院に付き添ってほしい。話を聞いてほしい。確かにそれもあります。けれど、それが全部かなったとして、この気持ちは消えるでしょうか。

たぶん、少し軽くはなっても、完全には消えません。

なぜなら、つらさの中心にあるのは作業の量ではないからです。中心にあるのは、「この妊活が、いつのまにか自分ひとりの事業になっている」という感覚なのだと思います。

予定を管理しているのは自分。通っているのは自分。体を使っているのは自分。結果を最初に知るのも、自分です。うまくいかなかった月に、最初に落ち込む役も自分です。

旦那は、そのとなりにいます。応援はしてくれるかもしれません。でも応援は、外側からするものです。

だから、優しい言葉をかけられても足りない。「気をつけてね」と言われるたびに、自分がひとりで出かけていく側なのだと確かめてしまう。

そしてここが、いちばん言いにくいところだと思います。

優しくしてもらっているのに、満たされない。 それを口にすると、自分がわがままなように思える。だから言わない。言わないまま、朝、背中を見送る。

そのうちに、こう考えはじめます。「こんなことで不満に思う私が、心が狭いのかもしれない」。

夜のダイニング、向かい合う二脚の椅子と片側だけのカップ

同じように感じている人は、少なくありません

相談の現場では、これは「よくある個別の悩み」ではなく、テーマとして立てられています。

東京都が運営する妊娠支援のポータルサイトに、不妊・不育ホットラインの相談員が書いた連載があります。その第4回は「夫婦が試される時―不妊というハードル」という題で、構成そのものが「(1)温度差」「(2)セックスをめぐる問題」「(3)コミュニケーション不足」の三つで立てられています。

温度差は、個別の相談ではなく、最初の項目として置かれています。

そのページには、実際に寄せられた相談としてこうした言葉が並んでいます。

「夫が非協力的で検査に行ってくれない」

「自分は子供が欲しいのにパートナーは乗り気でない」

(出典:東京都の妊娠支援ポータルサイト|東京都妊活課「不妊・不育ホットラインカウンセラーの相談エッセイ」)

同じページには、旦那の側から寄せられた相談も載っています。

「男性不妊で治療する妻の疲れた顔を見ると申し訳ないが、どう声をかけていいかわからない」

そして、話し合いについて、相談員はこう書いています。

「ケンカになるので話したくない、という場合もあれば、お互いを思いやるからこそ気まずくて話すのを遠慮してしまう、という場合もあります。」

思いやっているからこそ、話せなくなる。 黙っているのは、相手がどうでもいいからとは限りません。

なぜ、そう感じるのか

温度差は、気持ちの差である前に、立っている場所の差です。

二人の目標なのに、体を使うのは片方だけ

妊活は、二人で決めたことのはずです。けれど、実際に起きていることには、どうしても片側に寄る部分があります。

通院の予定に合わせて生活を組むのは、片方です。体に負担のかかることを引き受けるのも、片方です。毎月、結果を最初に知るのも片方です。

これは誰かが手を抜いているから起きているのではなく、そういう形になっているということです。

けれど、同じ目標に向かっているはずの二人が、まったく違う場所に立っている。 そのズレが、日々の小さなやりとりのたびに確認されます。「気をつけてね」という優しい言葉でさえ、送り出す側と、出ていく側という位置の違いを示してしまう。

代われないものへの怒りは、代われる人に集まる

いちばん重い部分は、誰にも代わってもらえません。 代わってほしいと言っても、どうにもならない。

行き場のない気持ちは、消えるわけではありません。行ける場所を探します。

そして、唯一「本当は代われたかもしれない」と思える部分——検査に行く、付き添う、話を聞く——に、集まっていきます。

だから、旦那が動かないと見えた瞬間に、その一点に全部が乗ります。 実際にはその一点が全体の一部でしかなくても、そこが怒りの入口になる。

これは、あなたが旦那を不当に責めているという話ではありません。代われないものを抱えているとき、人の気持ちは自然にそう動くということです。

そしてこの仕組みには、裏側もあります。旦那がとても協力的な場合、怒りの行き場所そのものがなくなります。 「こんなによくしてくれているのに、つらいと言えない」という形になる。優しさが、言えなさに変わるのです。

「協力してほしい」は、作業の依頼ではない

ここまでを合わせると、「協力してほしい」の中身が見えてきます。

それは、「作業を分けてほしい」ではなく、「これを自分の事として扱ってほしい」という依頼です。

だから、頼んだことをやってもらっても満たされないことがあります。言われたからやる、という形になった瞬間に、「これは私の事業で、あなたは手伝い」という構造がかえって確定してしまうからです。

一方の旦那の側には、前に挙げた「どう声をかけていいかわからない」があります。分からなくて動かないことと、関心がなくて動かないことは、外から見ると同じに見えます。 どちらなのかは、話してみるまで分かりません。

旦那と話す前に、自分の側の言葉を整えておきたいときは、妊活・不妊の気持ちを聞くカウンセリングのような場所もあります。

夕方の和室、窓辺に並べて置かれた二つの座布団

抱えたまま過ごすための考え方

旦那を変える方法ではありません。伝わる形に置き直すための考え方です。

以下は、選択肢として並べるだけのものです。やらなくても構いません。

「手伝ってほしい」ではなく、「一緒に決めたい」と言ってみる

作業をお願いすると、手伝いの関係が確定します。そうではなく、決める場面に呼ぶという言い方があります。

「次の通院どうするか、一緒に決めたい」「この先のこと、一回話す時間がほしい」。

内容は同じでも、呼び方が「手伝い」から「当事者」に変わります。 相手にとっても、何をすればいいのかが分かりやすくなることがあります。

責める形ではなく、自分を主語にして伝える

「どうして何もしてくれないの」は、相手を主語にした言い方です。言われた側は、まず言い訳を考えます。話の中身より先に、防御が立ち上がってしまう。

代わりに、自分を主語にして事実と気持ちだけを言うという方法があります。「今、ひとりでやっている感じがしてしんどい」。

責める意図がなくても、主語が相手になっていると責めているように届きます。逆に、主語が自分なら、否定のしようがありません。あなたが感じていることは、あなたにしか言えないからです。

怒りの宛先を、全部ひとつにしない

いま向いている怒りの中には、旦那に向けるべき分と、そうでない分が混ざっている可能性があります。

代われないことへのやりきれなさ。思いどおりにならない体。周りの何気ない一言。予定に振り回される生活。そのどれもが、旦那が原因ではありません。

分けたからといって、気持ちが軽くなるとは限りません。それでも、目の前の人に全部を背負わせずに済むことはあります。それは旦那のためというより、二人で話せる状態を残しておくためです。

夕方の台所、カウンターに置かれたノートとマグカップ

二人で決めることと、自分で決めることを分けておく

すべてを二人で決めようとすると、話し合いのたびに温度差が表に出ます。

どこまでを二人で決めて、どこからは自分で決めるのか。 先に線を引いておくという方法があります。線が決まっていれば、相手の反応が薄いことにその都度傷つかずに済むことがあります。

話す相手が見つからないときは、妊活・不妊の気持ちを聞くカウンセリングのような場所もあります。

二人だけで話せないときは

話そうとするたびにケンカになる。あるいは、気まずくて切り出せない。そういうときは、間に人を入れてもいいとされています。

前出の相談エッセイにも、こう書かれています。

「夫婦二人だけで話し合うのが難しい場合は、カウンセラーなど専門的な立場の第三者を交えて話し合うのもいいかもしれません。」

公的な相談先もあります。

  • 不妊専門相談センター(都道府県・指定都市・中核市に設置):不妊による心の悩みについて、医師・助産師等の専門家が相談に対応しています(こども家庭庁の案内)
  • 東京都 不妊・不育ホットライン:「不妊・不育について、経験のある女性カウンセラーが相談に応じる電話相談」(東京都の妊娠支援ポータルサイト)

※ 気持ちが重い状態が何週間も続いているときは、話し合いの前に、心身を診てもらうことを優先してください。

一人で抱えなくていい

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

このテーマがしんどいのは、相談したい相手が、悩みの相手でもあることなのだと思います。

旦那には言えない。言えば温度差がはっきりしてしまう。親には言えません。友人に話すと、旦那の評価の話になってしまう。同じ妊活中の人には、自分の夫婦の話を持ち込みにくい。

誰にも本音を話せない。

そのまま一人で抱え続けるのは、しんどいことだと思います。

話す相手は、身近な人でなくてもかまいません。むしろ、旦那を知らない相手だから言えることがあります。 旦那をかばいながら話さなくていい。うまく言えないまま、不満のかたちで出てきても大丈夫です。

Perchは、答えの出ない時間を、ひとりで抱えないための場所です。看護師資格を持つカウンセラーも在籍しています。オンラインなので、ご自宅から話せます。1回60分、初回は3,000円です。

うまく言葉にできなくても大丈夫です。 まとまらないまま、話したいところまで話していただいて大丈夫です。

妊活・不妊の気持ちを相談する →

この先を続けるかどうかで迷いが出てきた方は、不妊治療のやめどきが決められないのは、弱さではありません にも書きました。


執筆:日本メンタル心理士アカデミー(メンシア)
監修:植田那月(臨床心理士・公認心理師)

看護師資格を持つカウンセラーと、臨床心理士・公認心理師が在籍するカウンセラー養成機関です。産前産後の方が相談できる場として、カウンセリングプラットフォーム「Perch」を運営しています。

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