赤ちゃんの泣き声に耐えられない。そのまま抱えている方へ

夜の寝室。小さな灯りに照らされたベビーベッド

やっと寝てくれた、と思って横になります。

そこから数分も経たないうちに、泣き声が聞こえてくる。体を起こす前に、一瞬、肩に力が入ります。

抱き上げて、揺らして、おむつを確かめて、おっぱいをあげて。それでも泣きやまない。時計を見ると、まだ何時間もあります。

このとき、あなたの中で起きているのは「うるさい」ではないはずです。もっと、追いつめられるような、自分が何かを間違えているような感覚に近いのではないでしょうか。

「赤ちゃん 泣き声 耐えられない」。そんな言葉で検索して、このページにたどり着いた方もいらっしゃるかもしれません。

同じように感じている方は、少なくありません。

目次

その気持ちを、言葉にすると

つらいのは音そのものではなく、「泣かせたままにしている」という感覚かもしれません。

泣き声がつらいと言うと、たいてい「音がうるさいのがストレスなんだね」と受け取られます。

けれど、実際に起きていることは少し違うはずです。

隣の家から聞こえる泣き声は、ここまでつらくありません。電車で泣いている赤ちゃんの声も、気にはなっても、追いつめられはしない。

自分の赤ちゃんが泣いているときだけ、別のものが働いています。

それは、「いま、ダメなことをしている」という感覚です。

泣いている=何かが足りていない。足りないのは自分のせい。早く止めないといけない。止められない自分は、うまくできていない。そういう回路が、音と同時に動いています。

だから、泣き声が長引くほど、音がうるさくなるのではなく、自分への評価が下がっていきます。

そしてもうひとつ。この気持ちは、言いにくい。

「泣き声がつらい」と口に出すと、自分がひどい母親だと言っているように聞こえる気がする。実際、そう受け取られることもあります。だから言わない。言わないまま、一人で耐える時間が積み上がっていきます。

我が子の泣き声が嫌だなんて、母親として終わっている。

そう思っていらっしゃるとしたら、この記事でお伝えしたいのは、その逆のことです。

寝室の壁時計が指す、夜明け前の時刻

同じように感じている人は、少なくありません

この気持ちは、検索のされ方にはっきり出ています。

「赤ちゃん 泣き声 耐えられない」で実際に検索して、上位10件を確認しました(2026年9月)。

医療機関のページは、1件もありませんでした。 並んでいたのは、育児メディアの記事、匿名の質問サイトへの投稿、個人の相談サイトへの書き込み、個人のnoteでした。

このキーワードで表示される候補にも、「知恵袋」が付いてきます。

これが意味しているのは、この悩みは、名前を出して相談されていないということです。病院でも、健診でも、ママ友にも言えない。だから匿名の場所に書かれている。そして、それを検索している人がそれだけいる。

あなただけが特別に耐えられないわけではありません。 ただ、言える場所がないだけです。

つらさの重さは、人によって違います。上の子がいる方、睡眠がほとんど取れていない方、体の回復が追いついていない方では、同じ泣き声でも受け取り方が変わります。つらさに順番はありません。

なぜ、そう感じるのか

理由は3つ考えられます。いずれも、あなたが母親に向いていないという話ではありません。

泣き声は、放っておけないようにできている音だから

赤ちゃんは、自分では何もできない状態で生まれてきます。危険も、空腹も、痛みも、自分では解決できない。

だから泣きます。泣くことは、助けを呼ぶ唯一の手段です。

そして、その声は、まわりの大人が放っておけないように働きかけてきます。無視できる音として作られていたら、赤ちゃんは生き延びられません。

つまり、あなたが泣き声に反応してしまうのは、うまくできている証拠です。神経が細いからでも、我慢が足りないからでもありません。

ただし、この仕組みには続きがあります。反応し続けることを、休みなく求められる。 そこに無理があります。

「ダメなことをしている」という感覚は、許可では消えないから

「泣かせておけばいいよ」「気にせず自分のことをやりなさい」

経験のある方ほど、そう言ってくれます。悪気はまったくありません。

でも、言われてもできない。できないから、余計につらくなる。

助言をする側は、「許可がないから休めないのだろう」と考えています。 だから許可を出そうとする。

けれど実際には、許可をもらっても、体のほうが反応してしまうのです。泣き声が聞こえた瞬間に肩に力が入り、立ち上がろうとする。それは考えて決めていることではないので、「気にしなくていい」という言葉では止まりません。

問題の場所がずれているから、善意の助言が届かない。 あなたが素直でないからではありません。

睡眠不足と孤独が、同じ音を重くするから

同じ泣き声でも、日によって受け取り方が違うはずです。

眠れた日は耐えられる。誰かと話せた日は耐えられる。何日も細切れの睡眠が続いて、一日中誰とも話していない日は、同じ声が刺さります。

変わったのは赤ちゃんではなく、受け取る側の余力です。

これは、あなたの心が不安定だという意味ではありません。余力が削られた状態で、同じ負荷を受け続けているというだけのことです。

削られた側の話を聞いてもらう場所として、産後の気持ちを聞くカウンセリングのような場所もあります。

この「一日中誰とも話していない」という感覚については、産後の孤独感は、さみしさとは少し違います に書いています。

少し開いたドアの向こうに灯る、廊下の明かり

抱えたまま過ごすための考え方

泣き声を平気にする方法ではありません。耐えられない自分のまま、その時間を越えるための考え方です。

その場を離れることは、放置とは違う

これは、こども家庭庁が実際に案内している対応です。

赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、その場を離れて、自分がリラックスしましょう。少ししたら、戻って赤ちゃんの様子を確認しましょう

(出典:赤ちゃんが泣きやまない~泣きへの理解と対処のために~|こども家庭庁)

国が、そうしていいと言っています。

泣いている赤ちゃんをベビーベッドに寝かせて、別の部屋で数分座る。それは手抜きでも放置でもなく、公的に案内されている対応です。

「泣かせたままにするのはダメなこと」という感覚が消えなくても構いません。行動のほうだけ、先に許可されていると知っておいてください。

音を、物理的に少し弱めていい

耳をふさぐことに、罪悪感を持つ方がいます。

でも、聞こえ方を弱めることと、赤ちゃんを見ていないことは別です。同じ部屋にいて、様子は見えている。音の刺激だけを少し下げる。

片耳だけイヤホンをする、換気扇の音を足す、ドアを半分閉める。どれも赤ちゃんの安全を損なわずにできます。

刺激が少し下がるだけで、こわばりがゆるむことがあります。ゆるまない日もあります。それでも構いません。

夜明けの窓辺の小さなテーブルに置かれた水のグラス

「ここまで来たら離れる」を、先に決めておく

つらさが限界に近づいてから何かを判断するのは、とても難しいことです。

だから、限界の手前に線を引いておくという考え方があります。

「20分抱っこして泣きやまなかったら、一度ベッドに寝かせて別の部屋に行く」。数字は何でも構いません。決めておくことで、その場で自分を責めながら判断しなくて済みます。

※ ここから先は、念のためお伝えしておきます。

強くゆさぶることだけは、してはいけません(こども家庭庁も明確に案内しています)。手が出てしまいそう、声を上げてしまいそう、と感じたときは、その瞬間に赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、部屋を離れてください。 それが最善の対応です。

そして、そう感じた自分を、そこで責めないでください。そう感じるほど消耗しているというサインです。

眠れない日が続く、気分の落ち込みが2週間以上続く、赤ちゃんのことを考えるのがつらい。そうしたときは、産婦人科・助産師・お住まいの地域の保健センターにご相談ください。

離れているあいだに、その話を聞いてもらう場所として、産後の気持ちを聞くカウンセリングのような場所もあります。

どこに言えばいいか分からないときは、こども家庭庁が相談窓口の一覧を公開しています。「親子のための相談LINE」のように、電話をかけずに文字で相談できる窓口もあります。声を出すのがしんどい日でも使えます。

一人で抱えなくていい

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

泣き声がつらいことを、誰にも言えないまま過ごしてきたのだと思います。言えば母親として責められる気がして、飲み込んできたのだと思います。

一人で頑張る必要はありません。 うまく言葉にできないまま話し始めても大丈夫です。「泣き声が耐えられない」という言葉を、そのまま口に出していただいて構いません。

話す相手が見つからないときは、産後の気持ちを聞くカウンセリングのような場所もあります。オンラインで、60分。赤ちゃんが寝ている時間に、家から出ずに話せます。

今日感じている不安や戸惑いを、そのまま話せる場所があります。

産後の気持ちを相談する →


執筆:日本メンタル心理士アカデミー(メンシア)
監修:植田那月(臨床心理士・公認心理師)

看護師資格を持つカウンセラーと、臨床心理士・公認心理師が在籍するカウンセラー養成機関です。産前産後の方が相談できる場として、カウンセリングプラットフォーム「Perch」を運営しています。

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